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評論・エッセイ

江戸を歩く

江戸を歩く



 このふたつの光景は、おたがいによく似ている。よく似ていると言うよりも、同一であると言ったほうが正確だろう。ごくわずかな空間をあいだにはさんで、密接して建つ二軒の建物の、おたがいにとっての緩衝地帯のような、そのわずかな空間。これを僕は撮っている。
 おなじような光景を撮った写真が、僕のファイルのなかにたくさんある。写真機を持っていないときにはさほど気にならないが、写真機を持って歩いているときには、このような光景を僕は頻繁に写真に撮る。もう充分に撮ったではない…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

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