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時間のテーマ・パークを

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170712_時間のテーマ・パークを_画像

 建てられてからすでに存分な量の時間が経過しているがゆえに、それじたいがすでにそのような時間そのものとなっていると言っていい建物、そしてその周辺。たとえばそのほんの一例として、この二ページ〔写真・上〕にあるような建物とその周囲。

 そういった建物ばかりで綿密に構成されたテーマ・パークという幻を、いつのまにか僕は自分の写真機のファインダーごしに見るようになった。あらゆる建物が、すべての道路が、そしてそれらを取り巻くありとあらゆる造作が、平均して五十年の歳月をその内部に、あるいは外部に宿している街。街をつらぬくテーマは、そのような時間だけだ。

 あらゆるディテールが全国各地から移築された現物でありながら、いまも蓄積され続けている時間しかテーマとして持たない、いつのどことも知れない、幻の古い街。その街にあるすべての道を歩くだけで、一週間は楽にかかる街。歩けば歩くほど、蓄積された時間が自分にしみ込んでくるような、新しいものがいっさいない、奇跡のような街。そういう街を歩いてみたいものだ、そして写真機は持たずに。

(底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年)

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2003年 『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』 写真 時間 東京
2017年7月12日 00:00
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