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評論・エッセイ

ドライ・マティニが口をきく

 仕事をおえて、ビルから外へ出てくる。
 まだ、明るい。
 夏は、これだから、いい。
 仕事を終ってもまだ明るいという、夏の特性を、しっかり楽しまなくてはいけない、と自分自身に言って聞かせよう。
 夏の午後おそくから、夕方、暗くなるまでの、自分に許されている自由の量がすこしだけ増えたように思えるあの独特の時間に、不思議とよく似合う女性というものが、世の中には、いるのだ。
 笑うとき、あるいは喋(しゃべ)るとき、左右がいびつにゆがんだりしない唇。
 きれ…

底本:『ターザンが教えてくれた』角川文庫 1982年

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