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ただひとり東京と向き合う

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 どちらの光景のなかにもブロック塀がある。ブロック塀とそれに沿った道。写真に撮られた具体物が類似していることを根拠に、このふたつの写真はよく似ている、と判定することはたやすく可能だ。もっと似ているのは、左右ふたつの光景を写真に撮っているときの僕のありかただ。それは似ているのではない、完全に同一だ。
      

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 このような光景を写真に撮るとき、僕は僕ひとりきりで東京と向き合っている。孤立無援で天涯孤独だ。写真機とそのなかのフィルムだけが僕とともにある。そしてそれだからこそ、僕はこのような光景を写真に撮ろうとして、孤立し孤独となる。

 こんなにありふれた、どこと言わずそこらじゅういたるところにある平凡きわまりない光景を、なぜわざわざ写真に撮るのかという問題は、写真機から発生する。写真機のなかでそれは生まれ、僕へと伝わり、その僕はこんな光景を写真に撮る。そのときほどに僕がひとりきりになる瞬間は、いろいろ考えてもほかにない。そしてそのひとりきりの瞬間は、僕にとっては大事なものだ。

(2017年3月3日掲載、『ホームタウン東京−どこにもない故郷を探す』2003年所収)

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2003年 『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』 写真 写真機 撮る 東京
2017年3月3日 05:30
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