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評論・エッセイ

吉永小百合の映画 『青い芽の素顔』

一杯飲み屋のカウンターに座った川地民夫はビールを注文する。何かお召し上がり物は、と訊かれた彼は、チーズを下さいと言う。奈良岡朋子がチーズを切って出すまでのシークエンスは、人の動きをその通りに撮っただけだと思うが、僕にとっては素晴らしいものだった。娯楽映画の中の何気ない場面は、時としてその製作当時の人々の生活を、そのままにすくい取ってフィルムに固定する。

底本:『吉永小百合の映画』東京書籍 二〇〇四年

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