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評論・エッセイ

『吉永小百合の映画』 まえがき

 吉永小百合が映画でデビューしたのは、一九五九年三月の『朝を呼ぶ口笛』という作品からだ。二〇〇四年のいまからだと、四十五年前のことだ。四十五年遅れの観客として、いまこの作品を見たらどんなだろうか。この作品だけではなく、そこから始めて公開順に、まず最初の段階として一九六二年の『キューポラのある街』まで、二十八本の全作品を、僕に可能なかぎりの短い期間のなかで、つまりほとんどいっきに見るのは、充分に遅れてきた観客が楽しむ特権のようなものではないか。
 知っているようでいてじつはなにひとつ知らない、女優・吉永小百合を、いま初めて、…

底本:『吉永小百合の映画』東京書籍 二〇〇四年