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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『銀座化粧』

片岡義男が『映画の中の昭和30年代』で最初に取り上げた成瀬巳喜男監督作品は、1昭和二十六年(1951年)四月に公開された『銀座化粧』。その冒頭のシーンで銀座四丁目の交差点から和光ビルを見上げる少年の視線が自らのものと重ねながらも、この少年こそが映画の主題を担っている存在だと評する。まだ川の街だった築地、汐留近辺を舞台に、母と子の生活を描く物語を紹介しながら、片岡義男の目は、物語の中で描かれる生活空間の中に、低収入ゆえの帳尻合わせの日々を成瀬がどのように描いたのかを明らかにしていく。それこそが1951年当時の庶民の日々であり、その繰り返…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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