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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

過去という膨大な財産の蓄積が小さくて横柄な現在を抑制し、均衡をはかる──アメリカでのことだが

この長いタイトルの文章は、1998年に東京書籍から発行された書籍『音楽を聴く』の第一部だ。その冒頭で片岡義男は、LPレコードの時代には存在しなかったCDのメガストアを眺めて「店の棚に並んでいる音楽は全て過去のものだ」と言い、この長編音楽評論の中で、その言葉は何度も繰り返される。レコードの時代にはそれほど意識されなかったその事実は、メガストアの巨大さと大量のCDによって自覚される。そして彼は、その過去が記録されたCDを購入し、それを聴く。そこにあるのは1940年代から50年代のアメリカの空気そのものだし、それらを聞くでもなく当たり前に耳…

底本:『音楽を聴く』(第一部)東京書籍 一九九八年

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