バーボンを飲むにあたって
バーボンは女性の酒だ、とぼくは思っている。女性に似合う酒、というような言いかただと、ぼくの考えてることからすこし離れすぎる感じがあるので、バーボンは女性の酒だ、とぼくは言ってしまう。
女性の酒だ、と言うと、かならずや誤解を招くだろう。口あたりのいいおだやかな酒であるとか、酒の出来ぐあいそのものよりも、何人もの女性をまじえてにぎやかに雰囲気を楽しむためのきっかけとしての酒であるとか、そういった類の誤解だ。だから誤解のないように最初に念を押しておくけれど、バーボンはそのような意味での、女性の酒ではない。
では…
底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年
前の作品へ
次の作品へ