『カチューシャの唄』『青春のパラダイス』

せめて淡雪、溶けぬまに

　日本でヒットした歌謡曲を過去に向けてさかのぼると、大正三年、一九一四年に、松井須磨子の歌で大ヒットとなった、『カチューシャの唄』まで、たやすくたどりつくことが出来る。彼女は舞台劇のなかでこの歌を歌い、それを観た人たちによる口コミで評判となり、その評判を新聞が記事にして煽り、煽りついでに歌詞と譜面を掲載し、そのあとでレコードが発売された。彼女が伴奏なしでこの歌を歌う声、さらには舞台での台詞を喋る声を、このレコードで聴く…

底本：『歌謡曲が聴こえる』新潮新書　二〇一四年