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評論・エッセイ

歌謡曲が聴こえる 一九六二年、夏の終わり、竹芝桟橋

『ソーラン渡り鳥』

目覚めて西瓜を食べ

 一九六二年の僕は大学の四年生だった。東京の私大文科系の四年生だ。しかし四年生だからといって、なにがどう、これがこう、というようなことはいっさいなく、毎日なにをしていたのか、少なくともいまは思い出せないほどに、なにもなかった。
 夏は千葉県の館山で過ごすことにした。館山の海の近くに大学の寮があり、そのすぐ隣の旅館に夏の客として逗留しようではないか、と友人が僕を誘った。友人は前の年もそこで過ごし、館山が気に入ったようだった。

底本:『歌謡曲が聴こえる』新潮新書 二〇一四年

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