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評論・エッセイ

セントラル・コマンドとコアリション・フォーセズ

二〇〇三年十二月二十日(*日付については、「まえがき」参照)

 街の中心にある唯一の大劇場では、『冷戦』と題した大芝居が、長期にわたって連続公演されてきた。昔を記憶している人の話によれば、この芝居の初日は一九四五年の秋のことだったという。それ以来の連続長期公演は、一九八九年の秋深くまで続いた。もっと続くだろうと誰もが思っていたのだが、楽日は不意にやって来た。秋が急速に深まっていくその日の夜も更ける頃、『冷戦』の幕は降りた。人々は劇場をあとにし、やがて劇場の明かりは消えた。夜明けを待たずして、街のあちこちで小さ…

底本:『影の外に出る──日本、アメリカ、戦後の分岐点』NHK出版 二〇〇四年

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