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評論・エッセイ

春遠く、厳寒

 平成十年の年末、ある新聞の見出しのひとつは、「新卒者に春遠く」と言っていた。新卒者とは、次の年、平成十一年に大学や短大、高校などを卒業する予定の人たちのことだ。その彼らにとっていまだ遠い春とは、学校を出て就職先に勤めるという次の段階が、まだ確定していないことを意味している。会社勤めが春であるかどうか、それはいまは問わないとして、平成十一年の新卒者にとって、春は遠いらしい。
 平成十年の年の暮れに、まだ就職先がきまっていない大学生が十三万人もいると、その記事は伝えていた。内定を取りつけることを目標とした就職活動は四月から始…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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