ロウソクと月の光だけで
農業をやめてしまった人から、廃屋同然になった外房の家を借りて住んでいたときはじつに快適だった。電気がないので、夜になるとロウソクを使った。月が出ると、その光も僕を照らした。人の心を作るのは、真っ暗な夜と、そのなかに静かに登場して反射光を投げかける月なのだということが、僕にはよくわかった。
底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 一九九五年
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農業をやめてしまった人から、廃屋同然になった外房の家を借りて住んでいたときはじつに快適だった。電気がないので、夜になるとロウソクを使った。月が出ると、その光も僕を照らした。人の心を作るのは、真っ暗な夜と、そのなかに静かに登場して反射光を投げかける月なのだということが、僕にはよくわかった。
底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 一九九五年
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