本を買いにいった
書く女性をめぐる四つの短編を収録した「白い指先の小説」(2008年)の最初の一編は、大学在学中に俳句雑誌の編集部でアルバイトをして、そのままフリーランスのライターとして活躍していた高原裕美子が、小説家になることを決意した後で何をするかの物語。ライターであることと小説家であることが、具体的にどう違うかが身も蓋もないほどリアルに書かれ、小説家になると決めた彼女が古書店に行く必要性がストーリーの中心になります。小説家が本を買うと言うのはどういうことかが、町田の今はなき古書店を思わせる描写と共に展開します。
底本:『白い指先の小説』毎日新聞社 二〇〇八年
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