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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

街角のなかのぼく

初夏のよく晴れた日の午後、お気に入りの服を着てぼくはいい気分で下北沢南口の商店街を駅にむかってのぼっていった。この通りも店が多くなり人と自動車が増え、すごくやかましい町になった。馬鹿づらして歩いているぼくは、より多くのオカネを循環させるための巨大な円環装置の、小さなひとつの歯車的なパーツのようだ。

底本:『町からはじめて、旅へ』晶文社 二〇一五年改版(一九七六年初版)
初出:『コンサートガイド』一九七五年七月号