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小説

寝息と潮騒

そうして彼は、彼女の素晴らしさを思い出し、彼女と一緒にいた日々に思いを馳せる。

 この掌編は、五年前に離婚した写真家の男性が、離婚した女性を思い出している、それだけの物語です。離婚が決まり、彼女が「今日これでほんとにお別れ」と言った日の夜、彼女の家まで車で送っていった彼は、家に帰っていく彼女の後ろ姿をライカで盗み撮りします。ずっと写真を撮ってきた彼の初めての盗み撮りです。その写真は、彼の仕事部屋に設られた大きなコルクボードのどこかに留められていて、いつも彼女を思い出すことができるのです。そうして彼は、彼女の素晴らしさを思い出し、彼女と一緒にいた日々に思いを馳せています。

『NALU』53号 二〇〇六年七月

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