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小説

木曜日を左に曲がる

その夜、ふと見つけたバーに時間を置いて入ることは、小説を書く推進力になるのでしょうか。

 九月のなかば、イラストレーターの日比野裕子は、電車の中で翻訳家の水谷浩平と偶然に会って、二人はコーヒーを飲みに行きます。翻訳業を十年続けた水谷は、小説を書こうと考えていると話し、裕子は書くべきだと言います。二人は小説について話し、それは、二人の出会いから、真夏の水鉄砲遊びへと、二人の記憶をたどります。物語は裕子がイラストレーターとなっていく回想を描写することで、水谷という小説家が生まれるかもしれない、その瞬間に向けて進みます。その夜、ふと見つけたバーに時間を置いて入ることは、小説を書く推進力になるのでしょうか。

底本:『木曜日を左に曲がる』左右社 二〇一一年

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