片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

エッセイ

まず一杯の水をテーブルに

 高台の自宅のすぐ近くに階段がある。数えた人によると百三十段あるそうだ。風情のある階段とは言いがたいが、東京標準ではいいほうなのではないか。途中に何度も踊り場があり、ぜんたいはほどよく折れ曲がっている。登ったり降りたり、これまで何度繰り返したかわからないが、僕は退屈しない。階段のすぐ外にある植え込みは、つい先日まではつつじが咲いていた。梅雨の頃になるとあじさい紫陽花が一面に咲く。傘をさして階段を降りながら、そうか、そんな季節になったか、と紫陽花のたびに思う。そんな季節になったとは、夏が来たということだ。
 階段を降りると道…

このエントリーをはてなブックマークに追加