TVの記憶をふたつ
当時の僕の仕事場はたいそう快適だった。東の端にあった階段を二階へ上がり、まっすぐの廊下を西へ向けて歩いていき、突き当たりにあった和室を抜けると、二十畳ほどの広さの人工芝のヴェランダだった。このヴェランダの南西の角に、温室を介して面していたのが、僕の仕事場だった。机はほぼ南を向いていた。家の建物は高台への斜面の途中にあり、その家の二階からは例えば南に向けてなら、一キロは見通すことが出来た。この仕事場で小説その他の文章を書く仕事を、僕は日夜繰り返していた。
二階で仕事をしているあいだ、一日に三回は、一階へ降りていた。一階…
底本:『AJALT』2019年6月 第42号
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