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書評

「リーヴィング・ホーム」

 タイトルのリーヴィング・ホームは、直訳的な理解だと、家を去る、という意味だが、このアニタ・ブルックナーの二〇〇五年の小説の文脈では、家を出る、と解釈しておくといい。そしてこの場合の家とは、母親と同義だ。母親といっしょの生活を抜け出し、自分ひとりで別なところに住む。なんらかの仕事をして、あるいはしなくとも、母親から離れて自分だけになってみること、それがひとまずはリーヴィング・ホームだ。
 この小説に描かれている物語のなかでは、家を出て母親から離れるのは、娘だ。物語が始まったときにはともに独身で、二十七歳くらいの、ふたりの…

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