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評論・エッセイ

流域は文明の発祥の地

二〇〇四年二月三日(*日付については、「まえがき」参照)
 チグリス・ユーフラテスと片仮名書きされた固有名詞を、僕はいまでも記憶している。学校の世界史の授業で教わった。中学だったと思う。そして教科書の発行元は山川出版ではなかったか。チグリスではなく、当時はティグリスだったかもしれない。そのときから現在にいたるまで、このふたつの河を見たこともなければ、あるかなきかのほんの少しのつながりが発生したことすら、皆無の状態が続いた。だから三十年、四十年と時間が経過していくなかで、いくつかの片仮名がこうならんでいるだけの、遠いアラビ…

底本:『影の外に出る──日本、アメリカ、戦後の分岐点』NHK出版 二〇〇四年