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エッセイ

マンゴの似合う手

 平日の夜十時前に、近くのスーパーマーケットでマンゴをひとつ買った。千三百円だった。完璧に熟した、たいへんに美しい、かたちのいいマンゴだった。手に持ったときに僕が得た感触では、今日のうちに食べるといい、という判断がもっとも正しいと思えた。
 だから僕はそのとおりにした。自宅へ帰り、すぐにそのマンゴを洗い、皮を剝いて小片へと、ナイフで切っていった。そばでその様子をみていた人が、「マンゴの似合う手ですね。マンゴとよく調和してますよ」と言った。マンゴの似合う僕の手。僕の手にはじつはマンゴが似合う。普段はそんなことをまったく思わ…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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