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エッセイ

小麦をどう食べるか

 パスタは、小麦をどう食べるかという、人類にほぼ共通の普遍的な課題への、ひとまずの回答だ。小麦を栽培することを知ってからその小麦を粉にするまで、古代エジプトでは二百年ほどかかっていたことを、僕はどこかで読んでかなり驚いた。僕の記憶違いもありえるが、二十年を二百年と記憶してしまうようなことは、ないと思う。粉にしてからパスタを手にするまでも、おなじく遠く長い道のりを、人々は歩いたのだ。
 古代エジプトの男が少量の小麦を収穫する。茎から実った房を切り離し、妙に鋭いぎざぎざした毬いがを取り去り、籾もみというやっかいな殻を破ると、…

底本:『ナポリへの道』東京書籍 2008年

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