オードリーの記憶
アメリカの『ヴォーグ』の一九九三年四月号を見ていたら、オードリー・ヘップバーンについての記事があった。亡くなった彼女の追悼の記事だ。さすがにと言うべきか、あるいは当然のことでありすぎるからいまさら言うまでもないことか、写真は選び抜いた一点、そしてモノクロだ。これこそまさにオードリーだと多くの人たちが思うような写真が、一点だけ、簡潔に美しく、その記事のために使用してあった。
僕もオードリーはこの写真のような人として、記憶しておきたいと思う。素晴らしい写真だが、それをさらに削りこみ、僕だけのオードリーの記憶を作るなら、ここ…
底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 1995年