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評論・エッセイ

波の上を歩いた姉

 十五歳の夏の終わりに、姉は日本からカリフォルニアへ帰った。僕はハワイへ戻った。島はおなじだが、もとの家ではなく、新しい家だった。僕はまだ十歳になるまえだった。感謝祭が近くなった頃、姉はカリフォルニアからその家へ来た。姉は母親がちがっていた。彼女の母親は離婚したあと独身のまま、カリフォルニアにいた。事情が多少は複雑だったから、僕も姉もあちこちよく移動した。姉のほうが移動は多かった。
 感謝祭が過ぎても、姉は僕とおなじ家にいた。彼女はカリフォルニアには戻らず、しばらくハワイにいることになった、と父親が説明した。姉といっしょ…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年