やがて隠者になるのか
二十代前半の頃には、どこで誰と会っても、誰と仕事をしても、そのときそこに集まった何人かの人たちのなかで、いちばん若いのは常に僕だった。
「きみはいくつなんだ」
「二十四歳です」
「なぜそんなに若いんだ、馬鹿野郎」
というようなやりとりが、いろんな場所で何度もあったのを、僕はいまでも覚えている。馬鹿野郎、と言いたい気持ちはよくわかる。しかし、そう言った当人にしても、せいぜいが四十代なかばでしかなかったのだが。
「こんな若い人があんな文章を書くのですか。世も末ですね…
底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年
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