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片岡義男.com 全著作電子化計画

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小説

都電からいつも見ていた

都電の駅があるから成立していた店や街。そこで様々な物語が生まれたであろうという記憶を、小説という形で見事に記録した作品。

1967年の東京。都電を起点から終点まで乗って出版社に通い、絵を描く仕事をしている中原啓介は、いつも都電の窓から見て気になっていたバー「異邦人」を訪ねます。そこで、バーを営む千鶴子と、その姪の美樹子と出会います。美樹子と喋るほどに美樹子に惹かれていく中原は、美樹子に見せる絵を描いたことで、自分が作ろうとしていた本のテーマと方向性を思いつくことになります。翌年廃線が決まっている都電の駅の側のバーを舞台に、一枚の絵を通して、繋がる男女と消えゆく東京の風景を二重写しに見せる物語です。

底本:『物のかたちのバラッド』アメーバブックス 2005年5月
初出:「文學界」2005年1月号

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