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小説

かつて酒場にいた女

架空のアクション映画の描写が冴える、虚構についての物語

ゆくゆくは小説を書こうと考えているライターの大塚は、豪雨の中、新宿のバーへ駆け込みます。そのバーは、かつて映画女優をしていた30歳の平井美佐子の店。大塚は泡盛を飲みながら美佐子の映画女優時代の話を聞きます。そこに小説誌を編集する黒田がやってきて、大塚は二人から何度も小説を書くことを勧められます。再び三度と、大塚は美佐子が出演した映画の話を聞くうちに、スクリーンの中に現れる、どこにもいない幻の女という概念と小説を書くことの繋がりを発見します。架空のアクション映画の描写が冴える、虚構についての物語です。

初出:『Coyote』(二〇〇五年〜二〇〇七年)連載「廃墟の明くる日」と『SWITCH』(二〇〇五年四月号)所収「美しき他者」を再構成・加筆
底本:『青年の完璧な幸福 片岡義男短編小説集』スイッチ・パブリッシング 二〇〇七年七月