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小説

割れて砕けて裂けて散る

砕けている最中だと話す彼女は、次の打ち合わせの後の帰路、考えに没頭しながら歩いていたために、見たことが無いほどの大雨に遭遇します。抱えた一匹の鯛焼きを守る彼女の冒険が始まります。

 夏の終りと作家についての短編集とも言える「階段を駆け上がる 片岡義男短編小説集」の最後の一本は、作家の早坂エリンヌに降りかかる夏の終りを象徴するようなにわか雨の物語です。自分の短編集の著者近影のことなどを大学時代の写真科の同期だった牧野と打ち合わせていて、彼から聞いたエリンヌ自身が色紙に書いた言葉が「割れて砕けて裂けて散る」。砕けている最中だと話す彼女は、次の打ち合わせの後の帰路、考えに没頭しながら歩いていたために、見たことが無いほどの大雨に遭遇します。抱えた一匹の鯛焼きを守る彼女の冒険が始まります。

初出・底本:『階段を駆け上がる 片岡義男短編小説集』左右社 二〇一〇年

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