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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

情景の手帖 雨と風の設計図 2

 いま彼女がひとりで住んでいる部屋には、廊下がまっすぐに長くある。その廊下の片側は、なににも邪魔されることなく、廊下から天井まで、そしていっぽうの端からもういっぽうの端まで、一面に壁だ。なんの変哲もない壁布が貼ってある。この壁のスペースは、写真を何枚もならべてピン止めするのに、最適だった。だから彼女は、自分が撮るさまざまな写真の、自分のための展示スペースとして活用していた。
 三十五ミリ・フィルムで撮った写真の、対角線の長さで十二センチほどのカラー・プリントが三百六十枚、その壁に押しピンで止めてあった。左の端から横へ一列…

『キャシー・マム』二〇〇四年冬号

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