ワイキキのウールワースの食堂で昼食を食べながら、マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺されたことを報じる記事をホノルルの新聞で読んだのを、いまでもはっきりと僕は記憶している。一九六八年の四月初めのことだ。
はっきり記憶しているここを起点にして、一週間から十日ほどさかのぼった、三月後半の素晴らしい晴天の日の午後も、僕は鮮やかに思い出すことが出来る。この日、マノアの上のほうにある知人の自宅へ、僕は出向いた。オーディオ装置をすべて日本製の新製品に入れ換えたから、ぜひ聴いてみてほしい、と誘われたからだ。
入れ…
『キャシー・マム』二〇〇五年春号