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評論・エッセイ

先見日記 原価で900円のスーツとは

 いまの日本の一般社会は、あらゆる意味で細りつつある。細るとは、もっとも端的には、内容が低下していく、ということにほかならない。さまざまな品物が安く豊富にあふれている、物質的にはたいへんに豊かな日本だ、と言われているけれど、安く作れるものだけがたくさんある、と言い換えると正確な言いかたになるのではないか。安く作れるものとは、もどき、まがいもの、似て非なるものなどだ。
 どうすればものが安く作れるようになるか、考えてみるといい。いいものを作るにあたっては、作る過程の全域において、さまざまな価値がぎっしりと詰め込まれていく。…

『先見日記』二〇〇四年六月一日

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