先見日記 スタンディング・バイ・ヒム
首相になって最初にアメリカを訪れたとき、大統領からキャンプ・デイヴィッドの山荘に招待された日本の首相は、爆撃機搭乗員が身につける革のジャンパーを、大統領からプレゼントされた。なぜボマー・ジャケットなのか謎は残るけれど、胸元をはだけた妙な青い色のシャツの上に、首相はたいそう上機嫌でこのジャンパーをはおってみせた。このときに彼が発したひと言は、「ジャスト・フィット」というものだった。日本のTVで放映された映像のなかに、この音声は収録されている。
次に首相の英語を僕が耳にしたのは、9・11のあとにアメリカを訪問し、テロと戦…
『先見日記』二〇〇三年十二月十六日
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