先見日記 赤ちゃんは気づいている
自宅を出ておもてのバス通りに向かっていると、住宅地のあらゆる方向から、たくさんの人が僕とおなじ方向へ、押し黙って足早に歩いていく。バス通りのバス停には何重にも折り返した人の列があり、来るバスはどれも満員で乗れず、やっと乗るとそれはまさにぎゅうぎゅう詰めであり、そこから先の停留所は満員で通過していく。
1960年代なかば、高度経済成長のまっただなか、つい昨日までは世間知らずの馬鹿学生だった僕が、大学を卒業したとたんに初めて体験した、東京の平日の朝の、通勤ラッシュアワーはこんなふうだった。そしてこれはいまもなんら変わらず…
『先見日記』二〇〇二年十二月十七日
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