そしてその他の物語 第23回
「おみやげを買って来てくださいよ」と誰もが言った。一九六七年頃のことだ。一般市民の海外渡航が自由化されて、まだ五年たっていなかった。ハワイへいくのは僕にとって久しぶりだった。子供の頃にいってからそのときですでに十年は経過していて、僕は後期青年となっていた。
おみやげ、とはなにか。ハワイにはハワイ饅頭があるだろうか、と僕は思った。そのときの僕としては、そんなものがありそうな気もした。ハワイ煎餅。ハワイ羊羹。ハワイ草餅。あるいは、椰子の実ひとつ。フラ・ダンサーひとり。そうだ、アロハ・シャツがある。
「日本では…
『Free & Easy』二〇一二年六月号
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