そしてその他の物語 第22回
本は三冊買うのがいちばんいい、という法則のようなものを、僕は発見している。常にこの法則にしたがっているわけではないが、なんとなく書店に入ったときなどには、この法則を思い出し、三冊だけ買うことにしている。三冊買いに効果は確かにある。ある日あるとき、ひとりの人が自分のものにする本として、三冊という数には真理のようなものが宿っているのではないか。
三冊とは、三角形のことでもある。しかしこの三角形は、三つの点を直線で結んだだけという、平面上の単なる図形ではなく、高さや広さは言うにおよばず、奥行きも存分にある、複雑な立体世界を…
『Free & Easy』二〇一二年四月号
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