そしてその他の物語 第18回
『食堂とオートバイ』という本を作ろうとしていた頃をいま僕は思い出している。四十年はたっている。まだ僕が忙しくはなく、したがって相当に馬鹿げたアイディアでも、実行に移すことが出来た頃だ。食堂とオートバイとは、オートバイで日本のあちこちを旅している途中、屋号のなかに「食堂」というふたつの漢字が使ってある店を見つけたら、そこでオートバイを停め、道の反対側からその店の全景を真正面から写真に撮り、道を越えてその店に入り、テーブルにつき、料理を選んで注文し、料理が運ばれて来たらそれを写真に撮り、食べ終えてからおもむろに、店主とその奥さんを写真に撮…
『Free & Easy』二〇一一年十二月号
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