そしてその他の物語 第11回
おそらく三年前、初夏のある日の午後、千代田区神保町の古書店の店先で、僕は日本の古雑誌を何冊か見かけて興味を惹かれ、購入した。今回の写真の材料は、そのなかの一冊にあった、カラー印刷によるファッション・ページだ。
なんという雑誌だったか、メモしておくのを僕は忘れた。発行年月も記録していない。だから推測する他ないけれど、一九六一年ではないし、東京オリンピックの六四年でもない。とすると六二年あるいは六三年のどちらかだ、ということになる。六十三年だよ、と僕の体の記憶が言う。一九六三年に僕は二十三歳だった。おなじような年齢の女性…
『Free & Easy』二〇一一年五月号
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