その写真機を、ください 第三回 ペンタックスMZ–5
ペンタックスのMZ–5を真正面から撮った写真を広告で見たとき、僕の気持ちは少し動いた。そんなに悪くはないな、と思ったからだ。上から撮った写真を見て、僕の気持ちはさらに少しだけ動いた。プリズム部の左右に丸いダイアルがひとつずつあり、液晶表示窓が小さいことがわかったからだ。世界最小最軽量だという。無理に最小ではなくてもいいけれど、軽量であるに越したことはないと考える僕の気持ちは、MZ–5に向けてもう少し動いた。「とてもいいよ。僕も一台、注文した」という写真家の佐藤秀明さんのひと言で、僕の気持ちは線を向こう側へ越えた。六、七年前にニコンの…
『ラピタ』一九九七年五月号
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