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評論・エッセイ

片岡義男のぼくのお気に入り道具たち ベッドサイドの小さなエンタティナー hama・スライドヴューアー

 コーヒー・ショップを出て、彼女は腕時計を見た。土曜日の夜、七時三〇分だった。
 すぐ近くにある、いきつけの写真用品店に寄りたい、と彼女は言った。その店の閉店時間は、八時だという。時間は、三〇分あれば充分なのだ、と彼女は言っていた。
 ほんのすこしだけ買いものがあるのだという彼女といっしょに、ぼくは、その写真用品店へいった。
 彼女は、スライド用のカラー・フィルムを何本かと、スライド・マウントをふた箱、買った。彼女に写真を撮る趣味があるのだということを、ぼくはこのときはじめて知った。

『BE-PAL』一九八四年六月号

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