ある日、町田のタワーレコードで棚を見ていたら、カレン・ダルトンのCDがボブ・ディランの仕切りのなかにあった。ディランがただひとり高く評価した女性歌手がダルトンである、という話を知っている担当者が、このCDをここに入れたのだろう。それを、僕が買った。
ダルトンのLPは持っている。女性歌手でひとまとめにしたなかに、そのLPはかならずやあるだろう。しかしCDを見ればそれも買う。そして自宅に帰ると、すぐそのCDを聴いてみた。
音が出る直前、録音スタジオというものぜんたいをダルトンが嫌っていることが、伝わって来た。…
『図書』二〇二〇年二月号