さて、こうやってエラそうに片岡義男さんについて書き続けている僕だが、お付き合いが始まったのは二〇一四年からである。ちょうど十年になるが、はるか昔から仕事をご一緒していたわけではない。
いまから十年前、それまでの僕は女性ファッション誌の編集長のようなものを務めていた。五十四歳のおじさんが、女子大生向けの月刊誌の編集を続けるのは無理がある、と会社が判断したのだろう。突然の辞令で、僕はたった一人で本を作る部署へ異動することになった。部下も上司もいない立場だった。こうなったら開き直るしかない。よくある思い付きだが、僕は、