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ぼくは片岡さんが大好き|第34回|その話は

 僕の父親は百歳で存命中だ。ずいぶんと長生きをしていると思う。さすがに足腰は衰え、車椅子生活になり、体のあちこちに時限爆弾を抱えているので、やむなく介護型老人ホームに入居している。僕と妻が住んでいる集合住宅から歩いて五分のところだ。平日は妻が、休日には僕がその老人ホームを訪れ、他愛のない話をして、ごく短い時間だが、毎日ともに過ごしている。
 父親は多少の物忘れが見受けられるが、脳はまだきちんと動いているようだ。政治の話、プロ野球の話、先立たれた妻、つまりは僕の母親の話など、とにかくよく喋る。
 そんな父親だ…

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