VOYAGER

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小説

STORY TELLER 監督志願

 時間は夜の九時をすぎている。
 部屋のなかでは、準備がととのいつつある。映画の撮影のための準備だ。
 部屋は、畳の数になおすと、三〇畳をすこしこえるスペースだろうか。たいして広くないが、板張りのフロアや天井そして壁のつくりにたすけられて、落着いた居心地のいい雰囲気がある。
 部屋の南側は、部屋の横幅いっぱいに、広いバルコニーだ。
 バルコニーからは、湾の海と、その湾の縁に長くつづいている海岸を、見渡すことができる。部屋のなかからでも、海は見える。快晴の昼間には、海の広がりとその水平線、…

『Switch』Vol.4 No.2 一九八五年十二月号

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