「ここだ、ここです」
　片岡義男さんは一軒のラーメン店の前で、そう僕に言った。本当にこの店に入るのだろうか。暖簾を目の前にしても、まだ信じられなかった。まさか片岡さんがラーメンを啜るとは想像すらしなかったのだ。
「ラーメンくらい食べるだろう　にんげんだもの　　みつを」
　というご意見もあろうかと思うのだが、それまでの僕にはラーメンと片岡義男という人がどうしても結びつかなかった。だから、
「ラーメンを食べましょう」
　とのお誘いを受けたときは驚いた。激しく動揺した、と言ってもい…