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評論・エッセイ

読む、映画『旅人は夢を奏でる』 女がそろってお話は完璧だ

 原題は直訳して「北への道」という。南北に長いフィンランドのほぼまんなかを、ヘルシンキから出発して北の果てと言っていいケミヤルヴィまで、父親とその息子が、昔のアメリカの自動車で旅をする話だ。
 コンサート・ピアニストとして成功している三十代の終わりに近い年齢の息子のところへ、三十五年も行方不明だった父親が、突然にあらわれる。ふたりで北へ向かおう、と父親は息子を誘う。
 近所の駐車場で父親は慣れた手つきで自動車を盗む。コート・ハンガーひとつでドア・ロックをはずすことの出来た、昔のアメリカの自動車だ。コート・ハンガ…

『キネマ旬報』二〇一四年一月下旬号

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