読む、映画『ライジング・サン~裏切りの代償~』 脈々と維持される活劇娯楽映画の伝統
懐かしい、という言葉を僕は日常でほとんど使わない。文章で使うことは皆無と言っていい。しかしここでは、懐かしい、という言葉を使う、なぜならほんとに懐かしいからだ。そしてその懐かしさは、僕個人の時間に置き換えるなら、六十年さかのぼった過去を発生源としている。
一九五〇年代の東京にまだ貸本屋がたくさんあった頃、そこの棚にぎっしり詰まっていた漫画の単行本のなかで、活劇漫画や探偵漫画と呼ばれ表紙にもそう明記した作品群が、子供たちを待っていた。子供たちはそれらを盛んに読んだ。僕も読んだ。その当時の活劇漫画や探偵漫画のストーリー展開…
『キネマ旬報』二〇一二年六月下旬号
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