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評論・エッセイ

思っていないで答えをくれ

「と僕は思う」と、これまでに何度書いたかわからない。小説以外ではエッセイと呼ばれる短い文章を依頼されることが多い。「僕」という一人称で書くから、文章のあちこちで、「と僕は思う」と書いてきた。「と僕は思う」という言いかたには、現在の自分のすべてがある。いま自分のありったけが、その言葉の背後にあるのは当然のことだから、したがって、「と僕は思う」という言葉を、使いたいときにはいつでも、僕は使ってきた。
 ところがいまでは、「と僕は思う」は、可能なかぎり使いたくない言葉になっている。なぜなのか。そうなった最初のきっかけは、アメリカ…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年六月七日増大号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」51「思ってばかりいないで答えをくれ」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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