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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

とおりすぎるはずだった小さな町

 それは、さほど大きな町ではなかった。正しく発音できそうにないインディアン言葉で名がつけられている。にごった河が西にあり、その河の橋をこえてハイウェイがその町へ入ってきて、町の中心部分となっているにぎやかなところを四ブロックから五ブロックにわたってそのハイウェイはまっすぐにぬけている。道路の幅は広く、歩道にむかってななめに車をとめるアングル・パーキングがおこなわれていて、信号は四つ、つづいている。そのとき私は、その四つの信号のうちの最後の信号でとめられていて走り出したばかりだった。右の車線にいて、時速で二〇マイルも出ていただろうか。ア…

底本:『10セントの意識革命』晶文社 二〇一五年改版(一九七三年初版)

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